2016年の新卒採用が一段落する頃だと思いますが、人材採用には新卒採用の他に中途採用があるのは言うまでもありません。
景気が上向いてくると、将来的を見据えて、多くの企業が新卒を採用しようとします。
しかし、新卒採用は年に1回しか採用チャンスがありませんし、当然、採用した人材を一から教育していくことが必要になります。
それに対して中途採用は、即戦力として活躍してくれる可能性が高い人材の採用であり、いい人材が採用できれば会社の業績に即反映されます。
ただ、その中途採用ですが、私が社会人になった約30年前と比べると採用手法等が様変わりしています。
30年も経っているのですから、当然のことではありますが、その大きな変化をしっかりと受け止めて企業として対応していかなければ、これからの中途採用を成功させることは出来ません。
今回は中途採用の変化を振り返りながら、これからの中途採用について語っていきたいと思います。
紙媒体と人材斡旋業に頼るしかなかった30年前。
私が社会人としてスタートを切ったリクルートは、新卒採用はもちろん中途採用向けの紙媒体も発行していました。
『Bing』『とらばーゆ』という誌名を聞いて、なつかしく感じる方もいるのではないでしょうか。
私がリクルートの営業としてお客様と接していた頃、当然のことながら中途採用の相談も受けましたし、中途採用の媒体もご紹介させていただきました。
当時、見開き2ページで数百万円という掲載料金、新車が購入出来るような金額で(笑)、当時を知らない人が聞いたらビックリすると思いますが、他に主だった方法がなかったので、中途採用の母集団形成のためにそれだけの金額を払って、多くの企業が出稿したのです。
当時はこうした媒体の他に人材斡旋会社(現在のエージェント)に紹介してもらうくらいしか方法がありませんでした。
公的な人材斡旋機関として誰もが知っている職業安定所(ハローワーク)がありますが、なかなか企業が希望する応募者が集まらないということもあり、民間の人材あっせん会社の需要が徐々に高まりつつある時代でした。
職業安定法で「職業紹介とは、求人および求職の申し込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立を斡旋することをいう」と定義されていることから、人材斡旋業と呼ばれるようになったと言われていますが、民間企業が人材斡旋を行うには厚生労働大臣の許可が必要で、当時は人材斡旋を行う企業の数はそれほど多くはありませんでした。
しかし、日本経済環境の好転とともに多くの企業が人材採用を強化。人材採用ビジネスに参入する企業も増えました。
それとともに呼び方も人材紹介会社とやわらかい表現に変化し、現在はエージェントと呼ばれる企業が増えてきています。
IT技術の進化が中途採用のスタイルも変えた。
情報収集や通販など今や人々の生活に必要不可欠な存在となっているインターネット。
採用手法もインターネットの進化によって大きく変化しました。
上述でご紹介した紙媒体を展開していたリクルートはいち早くネット媒体へとシフトし、現在は転職サイト「リクナビNEXT」等を展開しています。
また、選ばれた人だけの会員制転職サイトを謳うビズリーチ社の「BizReach(ビズリーチ)」などのサイトも中途採用の母集団形成の新しい手段として活用されています。
さらには、SNSを活用した転職情報サービスも増えてきています。
これまでの中途採用手法は、企業が応募者からの連絡を「待つ」というのが普通のスタイルでした。
しかし、今は経営者自らや採用担当者がSNS等を積極的に活用し、自社に合った候補者を見つけて「こちらからアプローチ」する「ダイレクトリクルーティング」が主流になりつつあります。
価格的にもエージェントに比べて、成功報酬型でかつ安価であるという点も多くの企業が活用し始めてきている理由の1つだと考えられます。
中途採用の手法が「待ちから攻めへ」と大きく変化している中、優秀な人材を確保していくためには、さらなる工夫が求められるようになってきています。
TOPのしっかりとした考えの元、全社で採用活動にまい進することが成功への道。
これからの中途採用の手法として私がお勧めするものとして「社員紹介制度」があります。
これは文字通り、自社の社員から自分の知り合い等で転職したいといった方を紹介してもらうものですが、これをきちんと制度化し、部課ごとに目標を持たせて、採用戦略も考えさせ、定期的に軽食等を食べながら、懇親会等を開いて母集団形成の為の接触の機会を設ける会社も出てきています。
また社員から紹介があった人材が採用に結びついた際は、紹介してくれた社員に寸志ではなく、報奨金としてきちんとした金額を支払うことも重要です。
最近では「ここに優秀な社員がいる」という情報提供だけでもその方が採用に結びついた場合、報奨金を支払う会社まで出てきています。
古き良き時代の考えを持っているTOPの中には「自社のために人材を紹介するのは当然だろう」と言う方もいますが、今はそんな滅私奉公的な社員はあまりいないのが実情です。
ただ「社員紹介制度」が有効に機能する為には企業規模、業種、採用人数といった要因が大きく影響してくるのも事実です。
極端な話ですが、社員が数名の小さな会社では「社員紹介制度」はなかなか機能しません。
また「社員紹介制度」を導入してみたが上手くいかないといった声を聞く場合もありますが、その場合、TOPにとっては耳が痛い話になってしまいますが、自社の社員が会社を知り合いに紹介するほど魅力ある会社だと思っていないという可能性もあります。
そういった場合、その機会をチャンスと捉え、社員とざっくばらんに腹を割って話をする場を持った方がいいと思いますし、社員との話し合いが今後の採用成功に繋がってくるはずです。
もう1つ私がお勧めするのは、退職した社員を有効活用する「カムバック制度」です。
以前活躍していた社員に復帰してもらうのは、双方にとってメリットがあるというケースが多々あります。
ただ、会社を辞めていった社員には様々な理由がありますので、マイナス要因で会社を去っていった社員は言うまでもなく対象外にする必要があります。
最近は大手でも「カムバック制度」を導入する企業が出てきており、人材の有効な活用手法として注目されてきています。
昔と比べると中途採用の手法も多岐にわたってきています。
中途採用成功の為には新卒採用のように選考中、丁寧に接していくことも必要になってきていると思います。
私が作った造語ですが「中途採用の新卒採用化」というのが、これからの中途採用のキーワードになるかもしれません。
変化が激しい環境の中、採用担当者だけでいい人材を確保するのはどんどん難しくなってきています。
TOPのしっかりとした考えの元、全社で力を合わせていくことが必要不可欠です。
採用担当者任せにしないことが、これからの中途採用を成功に導いていく道だと思います。
私も時代の変化をしっかりと把握して、これからの時代に即した中途採用の手法をご提案し続けていきたいと思っています。
以上、何かのご参考になれば幸いです。
オルタナティブ・ブログ掲載中 採用今昔物語 「待ちから攻めへ」大きく変わる中途採用の母集団形成手法