内定辞退は採用担当者にとって頭の痛い問題です。
特に新卒採用では、複数の企業にエントリーして説明会や面接を受けますので、学生によっては複数内定を獲得することになり、内定辞退は避けて通れません。
また最近では中途採用でも内定辞退が増えてきています。
その辞退の理由で最近多いものが「嫁ブロック」と言われるものです。
「嫁ブロック」とは何か。中途採用で内定辞退が増加しているのは何故か。
今回は中途採用の内定辞退について考えてみたいと思います。
「嫁ブロック」とは
最近、中途応募者に内定を出したのに「妻が反対している」という理由で辞退するというケースが増えているようです。
この奥様の反対が理由による内定辞退が「嫁ブロック」と呼ばれているのです。
終身雇用が当たり前だった時代は、転職に対するイメージはよくありませんでしたが、現代は転職に対する考え方も大きく変わってきています。
しかし、そんな中、奥様が転職に反対するのは何故でしょうか。
一言で言えば「現在より収入が減るのではないか」「残業が増えるのではないか」といった将来へ対する不安が大きいようです。
ブラック企業という言葉が普通に使われるようになったこともあり、名前の知らない企業に対する不安や警戒心が以前より強くなっているのです。
また、ご主人が上場企業など知名度のある企業に勤めている奥様の中には「そんな無名な会社に転職したら、幼稚園のママ友や自身の両親に主人の会社名を言ってもわかってもらえないので恥ずかしい」といった人もいると聞きます。
例えば、同じ転職でも名の通った企業にヘッドハンティングされたというのであれば、「嫁ブロック」などはないでしょう。
奥様にとってよくわからない、見えない転職だから反対するのです。
この転職がご主人の将来的にプラスとなる可能性の高い転職であっても当然のことながら、奥様がそのプラスを実感することが出来ないので、不安や見栄が勝ってしまうのです。
逆に転職する本人は「奥様に反対された」ということだけで転職を辞めてしまうのは何故でしょうか。
自分自身と家族の将来を考えての転職ではなかったのでしょうか。
自分が考えて行動を起こした転職なのに「嫁ブロック」が内定辞退の理由というのは個人的にはちょっと情けない気もします。
「嫁ブロック」の大元は「親ブロック」
転職マーケットの中での「売れっ子」の年齢層は20代後半から30代前半です。
現在30歳の人が生まれたのは1986年、時はバブル絶頂期です。
しかし、彼らが物心ついた頃はバブルが弾けており、「失われた20年」に学生時代を過ごした世代です。
彼らが新卒で就職活動をしたときも景気は上向いておらず、厳しい環境の中での就職活動でした。
そんな中、彼らに大きな影響を与えたのは「親」です。
バブルを経験していい思いをした反面、バブル崩壊で痛い目を見たというのが、彼らの親世代です。
その結果、自分の息子の就職について安定した職に就いて欲しいといった思いから、いろいろと意見をし、彼らの判断に影響を与えてきました。
もちろん就職に際して、親や周囲が意見やアドバイスをするのは大切なことですし、いいことです。
しかし、過剰になるとマイナスにもなり得ます。
私が新卒でリクルートに就職した頃(30年前)、自分たちの親世代にとってリクルートの評判は良くありませんでした。
何故なら、無名企業だったからです。
よく「ヤクルト」に間違われました。(笑)
(私が入社した翌年、リクルート事件が起こり、その知名度は飛躍的に上がりましたが(苦笑))
よって当然、私の親も反対しましたが、親を説得して、自身で入社を決めました。
しかし、今、転職マーケットの中での「売れっ子」世代は、新卒時の就活等で親に反対されてそれに従った経験を持つ人が多い気がします。
要するに自分で決め切ることが出来ない方が多いように思います。
つまり「親ブロック」の経験が「嫁ブロック」へとその姿を変えたのではないでしょうか。
奥様へのフォローも一つの方法
不人気業種と言われる企業の新卒採用では、内定者の親御さん向け説明会を開催しているところもあります。
世の中に出たことのない新卒学生を採用する訳ですので、親御さんを含めて会社を理解してもらうというのは、まあ、大切ですし、必要なことだと思います。
「中途採用の新卒採用」化が進んでいる現在、内定辞退を防ぐためには奥様に会社のことを知ってもらうためのフォローも必要になってきているのかもしれません。
(奥様には内々に転職活動をしている方も多いと思いますので、奥様フォローには細かな配慮が必要ですが)
例えば、社長の名前で奥様宛に手紙を書き、いかにご主人に期待しているかといったことや、会社の良さなどを伝えるというのも今後は必要になってくるかもしれません。
ただ、新卒と違って社会人経験のある大人ということを考えると過剰なフォローは本意ではない部分もありますでしょうし、そもそもそういった人材を採用すべきなのかといった議論も聞こえてきそうです。
正直に言えば、奥様のフォローに時間を費やすぐらいなら、自身で判断出来る入社意欲の高い応募者を探した方がいいかもしれませんが、そんなに都合よくいい人材が採用出来るなら、誰も苦労はしません。
松下幸之助氏が「松下電器は人を作る会社です。あわせて電気製品を作っています」と言った話は有名ですし、松下氏は言葉だけではなく、社員および社員の家族に対してもきめ細やかなフォローを怠りませんでした。
また、ソニーの創業者である井深大氏は社員のお子さんが小学校に入学する際、全員にランドセルを贈りました。
昔から優れた経営者は社員と社員の家族へのフォローを大切にしてきたことは事実です。
そうした家族に対するフォロー活動が「嫁ブロック」を解除するためのカギであることは間違いありません。
しかし、無理なフォローや過剰なフォローは却ってマイナスになることもあります。
上記を参考にしていただいて、自社の採用方針や採用にかかるマンパワーを精査し、自社に合ったフォロー活動をしていくことが重要です。
以上、何かのご参考になれば幸いです。