前々回、前回と2回にわたって「2018年新卒採用を振り返る」と題して、18採用の状況とそこから見えてくる課題を述べてきました。
今回はそうした現状を踏まえて、19採用を成功させるためには「何が必要か」「どういった採用活動をするべきか」など、より具体的なポイントについて考えてみたいと思います。
売り手市場が続く19採用
「2018年新卒採用を振り返る」でお伝えしたように今、新卒採用を取り巻く環境は「超厳しく、超難しい」状況です。
18卒の平均求人倍率は1.78倍で、6年連続上昇を続けており、19卒はさらに上昇すると見られています。
1.78倍という数字だけみれば、そこまで高いとは思えず、健全な数字に見えるかもしれません。
しかし、これはあくまでも全社平均です。
企業の従業員規模別で見てみると5000人以上の企業の平均は0.39倍、反対に300人未満の企業は6.45倍となっています。
もう少しかみ砕いて説明すると300人未満の企業の採用目標数の合計が1万人だとするとそこに応募してくれる学生は1500人しかいないのです。
逆に5000人以上の企業の採用目標数の合計1万人だとするとそこに2万5000人の学生の応募が殺到するということなのです。
ので、中堅中小企業においても優秀な学生を採用したい訳ですが、上記のようなマーケットになっていますので、取り合いになるのは必至です。
また今後の新しい流れとして、エントリーシートも担当者がすべて目を通すのではなく、AI・ビッグデータを活用し、自社が採用すべき人は、過去こういう言語を使ってエントリーシートを書いてきている、面接時にはこういう行動をしていた等、その人の特徴を解析し、選考判断に活用していくといったいわゆる「HRテック」と言われる分野も急速に進んでいくと思います。
こうした中で、採用を成功させるためには、「ブレない」覚悟と体制が必要です。
前回もお伝えしましたが、トップを含め、全社で採用に関与していかないと採用はまったく上手くいかない時代に突入したのです。
実は採用成功のためのポイントは3つしかない
では、何に気を付けて、どういった採用活動をしていけばいいのか、具体的なポイントは何か、についてお話したいと思います。
採用成功のポイントは
・母集団(=(新卒で言えば)会社説明会への参加者数)を増やす
・選考途中の離脱を減らす
・内定辞退を減らす
いろいろあるように感じますが、実はこの上記3つしかありません。
まず、母集団(=会社説明会への参加者数)を増やす方法ですが、手っ取り早いのは、ナビ等の露出を増やすことです。
ただ、これはそれなりにお金もかかります。
また、マルチメディア(多チャンネル)化も効果があると思います。
これは(新卒採用で起きている)採りたい学生以外も含めて形成されてしまう母集団の中身を変えて、採りたい学生のみの母集団を形成し、そこに自社のリソースを集中させるもので、今、流行りの「ダイレクトリクルーティング」の一つです。
ただ、大手企業と比べて中堅中小企業はお金をあまりかけられないのが現状です。
ので、お金がかからないものとしてはインターンシップなどで学生と早期接触していくといった方法があります。
また、会社説明会については過去、だいたい10名×10回で100名の動員が出来ていたが、年々、1回あたりの動員数が減少し、1回あたり5名程度になってしまったということであれば、1回5名を20回行う等、会社説明会の実施回数を増やすことで、母集団を保つ方法もあると思います。
また、内定者や入社2年目ぐらいまでの社員の母校(理系の場合、研究室)を訪問して、教授やキャリアセンターの担当との繋がりを作っていくことも大切です。
形になるには3年ぐらいの年月を要すると思いますが、地道に積み重ねることによって学校(研究室)からの紹介でインターンシップ生を受け入れることが出来たりします。
その他、採用に結びつけるのはなかなか難しいとは思いますが、学内セミナーへ参加することもキャリアセンターとの繋がり作りの一環としてやっておくべきだと思います。
採用が厳しくなると必ず起こる動きではありますが、地方採用にも目を向けるべきだと思います。
選考途中の離脱を減らすために
次のステップで大切なのは選考途中の離脱を減らすことです。
そのためにまず大切なのは、選考期間の短縮化です。
説明会参加から一次選考、一次選考から二次選考といった、次の選考への期間を最大でも(時期によっても違うのですが、例えば)5営業日として、早め早めに内定を出していくことが重要です。
早めに内定を出すメリットは、それによって、その学生の意識の中に早めに自社を入れ込むことにあります。
これは、今まで気にもしていなかった異性から告白されると、その日を境にその人を意識してしまい、良さが見えだしたりして・・・結果、付き合ってしまうといった行動と似ていると考えています。(初恋理論)
もう一つは選考フローの複線化です。
例えば、上位20%の学生のみ、選考プロセスを一つスキップさせるなどです。
どうしても採用したい学生にこちらの思いを伝え、選考を一つスキップさせることで、学生の意識を高めていく(優越感・自身を高く評価してくれた喜び)のです。
そして、意外と取り組んでいない(or取り組めない)こととしてあるのが、面接官のスキルアップです。
採用は営業活動と同じです。
「自社の製品の魅力を正しく理解してもらい、購入してもらう」が「自社の魅力を正しく理解してもらい、入社してもらう」となるだけです。
営業に求められるのは正しいヒアリングをし、そのお客さまに会った営業活動をすることで、お客さまから信頼されることです。
つまり、採用に置き換えると採用担当者、面接官がそもそも学生から信頼を得られているかが、大きなポイントになるのです。
そのためには短時間で学生からの信頼を得る必要がある面接官がスキルアップすることが急務です。
私の経験からすると役員クラスの面接官の方こそ、スキルアップが必要だと痛感しています。
中には学生の話もよく聞かず、自分たちの頃はね、などと、昔の自慢話で終わってしまう役員などもいます。
我々が信頼できない会社からものを買ったりしないのと同じで、学生も信頼できない会社に入社しようとは思いません。
学生から信頼を得ることが内定承諾に結びついていきますし、入社後のパフォーマンスにも影響してきます。
次回は、採用成功のためのポイントの3つ目となる、内定辞退を減らすために何をするべきか、について考えてみたいと思います。
以上、何かのご参考になれば幸いです。
2018年新卒採用を振り返る(前編)〜いまだ採用目標数に達しない中堅中小企業が増加〜
2018年新卒採用を振り返る(後編)〜1dayインターンシップが激増する19採用〜