企業が新卒採用を行う際、「求める人物像」を掲げてホームページなどで紹介します。
そして、その「求める人物像」を柱に面接、選考を進めていきます。
それは、新卒採用を進めていく上でとても大切なことです。
しかし、中堅中小企業の経営者と「優秀な人材」について話をすると掲げている「求める人物像」とズレを感じることが多々あります。
今回は中堅中小企業における優秀な人材とは?について、やや変わった角度から考えてみたいと思います。
「求める人物像」とは
新卒採用を進める上で、まず大切なのは自社の「求める人物像」を設定し、社内で共有することです。
「求める人物像」がしっかりしていないと面接官によって聞くことが変わったり、選考基準にブレが生じたりします。
「求める人物像」を考える際、SPI等の適性試験の結果などから、自社で活躍している社員の行動特性(コンピテンシーモデル)をピックアップし、その行動特性に近い人材を「求める人物像」としている企業が多いと思います。
その考え方や進め方は間違っていませんが、中堅中小企業ではSPI等の結果を有効に活用されていないことが多いように思います。
そうした背景の中では最終的に経営者の判断で採用、不採用を決定することになりますが、その場合、自社の「求める人物像」より、経営者が心の中で思い描いている「優秀な人材」が基準になっている気がします。
求める人物像=必ずしも優秀な人材ではない
上述したようなズレがなぜ生じるかですが、「求める人物像」にはどうしても建前的な要素が入ってくるからだと思います。
多くの企業の「求める人物像」が似たようなものになっているのはそのためだと言えるかもしれません。
建前的な部分があるからダメだと言うのではありません。
というより建前的な部分も必要です。
しかし、建前があれば経営者の本音もあります。
その経営者の本音の部分もしっかりと捉える必要があると思います。
例えば、学歴は一切関係ないと言っている経営者が上位校の学生が採用できたと心底喜んでいるということが結構あります。
本音では学歴を気にしていたわけです。
中堅中小企業の経営者の場合、自分で会社を立ち上げた方々が多い訳ですから、その自社に上位校の学生が入社してくれるとなれば、嬉しいのは当然だと思います。
要するに自分が本音で考えている優秀な人材はなかなか自社を志望する可能性は低いと思わざるを得ないため、本音とは異なった求める人物像を設定しているのだと思いますし、本音を出し過ぎればいいという訳でもありません。
ただ、経営者の本音が採用担当者にきちんと開示されていない場合、経営者と採用担当者との間でミスマッチが起こってしまうことが多々あります。
採用担当者はこの学生は一押し!と思い、最終面接に挙げた結果、不採用になり、採用担当者のモチベーションが下がるケースを過去、何度も見てきました。
今一度、経営者が自身の本音と向き合い、それは可能な限り、採用担当者にも開示することが必要だと思います。
スペシャリストかゼネラリストか
では、中堅中小企業にとっての「優秀な人材」とはどんな人材でしょうか。
業界や職種によって、一概にそうは言えないと思いますが、中堅中小企業には、スペシャリスト志向よりもゼネラリスト志向の学生が合っているんだろうと思います。
例えば、技術系の学生で学生時代に機電系の勉強をしてきたので、入社後もその知識を生かしてその分野を極めていきたいという学生よりも機電系分野だけではなく化学的な分野にも挑戦してみたいといった学生の方が活躍分野は広がると思います。
もちろんスペシャリスト志向も大切だと思います。
ただ、大手企業と違い中堅中小企業は社員一人ひとりが担う分野がどうしても幅広くなってしまうので、いろいろなことに興味を持ってチャレンジしていける人材が中堅中小企業には合っているように思います。
建前であったとしても「求める人物像」は各社違うと思います。
それと同様に「優秀な人材」についての考え方も経営者によって違うはずです。
ただ、中堅中小企業にとって「自社に利益をもたらす人材」が「優秀な人材」であることは間違いありません。
そうした「優秀な人材」を採用するためにも、経営者の本音を踏まえて「求める人物像」を今一度見直してみることをお勧めします。
以上、何かのご参考になれば幸いです。