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2017.07.30

変化しつつある「オワハラ」

数年前から「オワハラ」といった言葉が学生の間で話題になり、ニュースにもなりました。
「オワハラ」はご存じの方も多いと思いますが、「内定出しをするので、もう他社を回らないで欲しい」といった企業からのお願いですが、学生によっては「就職活動を終われ」と迫られたと感じてしまい、「就活終われハラスメント」となってしまう訳です。

しかし、以前にも書きましたが、昔から内定者の囲い込みなど「オワハラ」的なことは存在していました。
つまり、度を越した「オワハラ」は問題ですが、ある程度の「オワハラ」は仕方ないのかもしれません。

ただ、その「オワハラ」のスタイルが、最近変化してきているような気がします。
今回は「オワハラ」から採用活動を考えてみたいと思います。

「オワハラ」は内定辞退防止策の一つ

企業が採用したいと思った学生に対して、現時点で就職活動を終わらせれば内定を出すといった行動をとり、それが学生から脅迫的なもの、不快なものに感じられてしまうと「就活終われハラスメント」と言われてしまいます。

「オワハラ」は前述したように一時期ニュースになりましたし、厚生労働大臣が、学生が納得しないまま就職しても学生と企業にとってよい結果につながらない可能性があるとして、企業に対してオワハラを行わないように呼びかけたことなどで、「オワハラ」はだいぶ減ったようです。
かつ最近はSNSなどでの情報拡散のスピードが速いため、「オワハラ」話が出回ると採用活動はもとより企業イメージにまで影響してしまうといったことも大きな要因だと思います。

しかし「内定を出すので、他の企業を回らないで欲しい」というのは、人事担当者の素直な思いです。
自社に心から入社して欲しいと思って内定を出した学生から内定辞退されるのは辛いことですし、それが予想以上の人数に及べば、ほとんどの学生の就職活動が終わった時期であったとしても新たに追加採用をしなければなりません。

学生の本分である学業がおろそかになるといった理由で、就活スケジュールが何度も何度も変更されてきましたが、結果、就職活動の長期化につながってしまっています。

同じく企業側にとっても採用活動の長期化は大きな負担です。
そうした負担を少しでも少なくするために「内定を出すので、他の企業を回らないで欲しい」と企業側の本音をぶつけることで、学生の本音も知ることが出来、その本音が企業側から見て、ややネガティブな場合、ネガティブさを払拭すべく、学生ともっと話をする等、様々な対策を打って内定辞退を防止するための行為の入り口が「オワハラ」と言われてしまう訳です。

ただ「オワハラ」のスタイルも変化してきているようです。
以前のような「就活を今、ここで終わらせなければ内定を出さない」「内定承諾したら就活を終わらせることに同意したとみなす」といった、あきらかに度を越した「オワハラ」は激減し、LINEなどを上手く使って、学生の今後の就活の意思を聞くといった企業も増えています。

更には「内定」ではなく一旦、「最終合格」といった形をとる企業も出てきています。
最終面接に合格した学生に対して、「あなたのレベルは採りたい水準に達しています。ただし採用には枠があります。あなたがうちの会社に来てくれると決めたら教えてください。決める前に枠が埋まってしまったらごめんなさい」と学生に判断を委ねつつ、反面、焦りの気持ちも持ってもらいながら判断を早めてもらうといった手法です。
企業もできるだけ早めに内定数を確定させるためにあの手この手で努力しているのです。

「お祈りメール」は今や昔?

学生の間で企業からの不採用通知を「お祈りメール」と言っていることを知っている人は多いと思います。
不採用通知メールの最後に「今後のご健闘をお祈り申し上げます」という言葉を添えるのは日本的なマナーの一つだと思いますが、この最後の「お祈り申し上げます」から「お祈りメール」となったわけです。

しかし、売り手市場の今、この「お祈りメール」を出さない企業も出てきています。
特に学生の応募が多い大企業に多いのですが、当落線上にいる学生をフリーにしておき、内定辞退の数によって、いわゆる「繰り上げ合格」を実施する目的で、意図的に「お祈りメール」を出さないようにしているのです。
これは「サイレントお祈り」と呼ばれ、学生の間では話題となり不評をかっています。

「サイレントお祈り」は「オワハラ」の対義語ではありませんが、企業側からすれば学生の本音にグッと迫ると「オワハラ」と言われるため、内定確定数がなかなか正確に掴めず、そのための予備軍を確保しておきたいがために不採用通知を出さないで様子をみようということだと思います。

これはあくまで経営者としての個人的な思いですが、内定を固めたいという思いで「内定を出すので、他の企業を回らないで欲しい」と伝えれば「オワハラ」と言われ、内定辞退者に備えて予備軍を確保しておけば「サイレントお祈り」と非難される・・・双方が双方の事情を知らない中でのことですので、こういったことが起きてしまうのはある程度仕方ないことではありますが、日本の場合、本当に(学生に限った話ではありませんが)被雇用者サイドが優遇されているなと感じます。

学生のコミュニケーションのとり方も変化してきている

「サイレントお祈り」について言えば、最終面接時に「1週間程度で合否の連絡をいたします」というのが一般的なので、仮に最終面接時に期限を区切られなかったとしても「1週間経ちましたが、まだ連絡をいただいていないのでメールさせていただきました」と学生の方からアクションを起こせばいい訳ですが、最近の学生の多くはそうした行動をせず、じっと待っているケースが多いようです。
少子化のため、子どもの頃から大事にされ、学校でも先生の方からOne to Oneで声をかけてくれることに慣れて育っているので、放置されることを嫌がり、自分から働きかけるのがあまり得意でない学生が増えてきているように思います。

そうしたコミュニケーションのスタイルが変わってきた学生を相手にする訳ですから、一昔前とはコミュニケーションのとり方も大きく変える必要があります。
One to Oneの対応が取れればベストですが、大勢の学生を相手にしているので、正直難しいと思います。
ので、出来る限り要所要所できちんと個別に話す時間をとるなど、いかにして学生にOne to Oneの対応をしてもらっていると常に感じ続けてもらえるかどうかがポイントになってきます。

こうした話をしますとかなり手間がかかって大変だなと感じる方も多くいると思います。

しかし、もう8月を迎え、来年のインターンシップも始まる中、18の採用活動を終わらせたいというのが、人事担当者の本音だと思います。
この思いは学生も同じで「夏休み前には行く企業を決めて、就活を終わらせたい」というのが素直なところです。

正式選考開始時期以前に就活の終わりを迫るのは論外ですし、前述したように度を超した「オワハラ」は良くありません。
しかし、6月1日の正式選考開始以降は双方が意思を明確にすることが大切であり、それがお互いにとっての幸せに繋がるのではないかと思います。

ただ、時代は常に変化していますので、今の学生のコミュニケーションのとり方が良い、悪いの議論はさておき、今の学生に合ったコミュニケーションをとりながら採用活動を進めることで、結果、早めに採用活動を終わらせ、次年度の採用戦略立案に先手先手で着手するようにしていくべきだと思います。

以上、何かのご参考になれば幸いです。

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